蛮族700字文体シャッフル・アンコール1
優勝: Kiygr (的中 14)
テーマ: 花
投稿期間: 4月22日 21:00 ~ 4月25日 20:59
予想期間: 4月25日 21:00 ~ 4月28日 20:59
解答発表: 4月28日 22時ごろを予定
参加方法: SCPopepapeのDiscordのDMに作品を送ってください。
場所がバラバラだと管理が死んでしまうので、必ずDiscordのDMでお願いします。
文体シャッフルって?
みんなで匿名で文書いて、それを誰が書いたか当てる企画です!
参加資格
Discordサーバー「21, 22職員鯖」に参加している。
文がAI作ではない。
ルール
1人1作まで。
著作があると当てやすいですが、無著作OK。ただ、いつか残しましょう。
短歌1本を初めとする暴れについて、おもしろい/クオリティが高いものは許容とします。おもしろくなくてもSCPopepapeフィルターさえ通過できれば許容です。晒し上げられる覚悟はしておいてください。
今回限定で、作品にタイトルをつけることを許可します。任意なので、つけなくても構いません。タイトルの文字数は700字の中にカウントしませんが、だからといってタイトルに本文を突っ込むような真似をするとエントリーを突っ返しますのでご承知おきください。
画像を使用する場合は一律でSCPopepapeがストレージにアップロードしますので、使用する画像をDiscordのDMにて送ってください。アップロードが完了次第URLを送り返します。締め切り直前に画像を送ってきた人は晒しあげます。
著者予想は鯖外からも広く受け付けています。
Burnin_A_GoGo
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著者ページ
hallwayman
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著者ページ
Kajikimaguro
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著者ページ
makigeneko
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著者ページ
MikuKaneko
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著者ページ
Musibu-wakaru
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著者ページ
SCPopepape
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著者ページ
SealBaby-V
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著者ページ
teruteru_5
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著者ページ
投票締め切り: 4月28日 20:59まで
以下のGoogle Formに必要事項を記入の上送信してください
著者まとめ
1, Childream
2, Fireflyer
3, SCPopepape
4, Sodyum
5, rokurouru
6, MikuKaneko
7, leaflet
8, kajikimaguro
9, Tobisiro
10, teruteru_5
11, Syutaro
12, Tutu-sh
13, makigeneko
14, kihaku
15, Matcha tiramisu
16, Musibu-wakaru
17, Cocolate
18, ocami
19, hallwayman
20, SealBaby-V
21, Enho_Osho
22, Burnin_A_GoGo
- No.1
- No.2
- No.3
- No.4
- No.5
- No.6
- No.7
- No.8
- No.9
- No.10
- No.11
- No.12
- No.13
- No.14
- No.15
- No.16
- No.17
- No.18
- No.19
- No.20
- No.21
- No.22
Level 109 N - "涅槃Nirvāṇaへと至る道"
作者: Childream
票数: Childream ×4, Sodyum ×2, hallwayman×2, Burnin_A_GoGo, MikuKaneko, Matcha tiramisu, Fireflyer
Level 109 Nとは、バックルーム内の109 N番目の階層である。
概要
Level 109 Nは一面が花で覆われた屋外空間である。しかし、後述する特性のためその外見は大きく変化する事に留意するべし。
階層には必ず2人の人物が同時に辿り着き、それぞれが当該階層を異なる空間として認識する。
一名は「背の高い木々に囲まれた晴天の元に広がる花畑」と認識する。これは主に未成年であり、バックルームの存在を認知していない人物が対象となる。対象は階層を囲む木々の隙間から川を跨いだ先に故郷の風景を見る事ができる。
一名は「地平線が無限に続く、夕焼け空の元に彼岸花が広がる空間」と認識する。これは齢30を超え、バックルーム内で10年以上の歳月を得ている人物が対象となる。対象はもう一方の人物の誘導により川の存在を認知できるが、水は赤く染まっており、先を見る事ができないと主張する。
多くの場合、両名は何分か言葉を交わした後、一名は川を渡り故郷へと帰還し、一名は階層内に留まる旨の内容を互いに伝え、離別する。
一名は川を渡る最中に外れ落ち、両名が所有していた物品と共にLevel 0へと辿り着く。程なくして、その身体が赤く濡れている事に気が付くだろう。
階層内に残った人物がその後、別階層に移動した例は報告されていない。
入口と出口
階層への入り方
- 不明 無我の境地、あるいは諦観。
階層からの出方
- 不明瞭。
血飛沫に山桜桃一輪
作者: Fireflyer
票数: Fireflyer ×4, Tutu-sh ×2, Syutaro, rokurouru, Enho_Osho, SealBaby-V, Musibu-wakaru, makigeneko, ocami
私の知っている「戦の花形」は刀だった。
両親からはよく、「ウチの女子は祈祷や呪術を使うもんよ」なんて言われたが、戦に出向くおっちゃんが提げた刀より美しい兵器を私は見た事が無かった。
「淀ねえ!時間!」
「あいよ。もうじき行く。待ってな」
そう戸の外にいる童に告げると、納戸から袖と籠手を取りだし、身につける。
しかし、やはり時の流れというのは残酷であるなと感じてしまう。
南蛮人が齎した新たな武器、鉄砲。爆音を放ち、万物に勝る速さで鉛玉を撃つこの兵器は、近年あらゆる戦場で利用されており、特に織田信長の率いる鉄砲兵は一流であった。
胴を着け、上帯を勢いよく締める。何時に無く気合いが入るこの瞬間には、やはり高揚感を覚える。
「あ、淀ねえ!」
「お。近坊じゃないか。元気してたか?」
赤色の兜の位置を直すと、近坊の天真爛漫な顔が今日は曇っている様子が窺える。
「なあ、淀ねえ。ほんとに行っちまうのか?」
「悪いな、近坊。あんたの叔父さんの出世戦なんだからな。気張らねえと」
私は刀を腰に提げながらそう告げる。気張る、という言葉に半ば呪いのようなものを覚えつつ。
「わかった。帰ってきたら双六やろうな!」
明朗さに目が眩む。笑顔を崩さないようにしつつ、外を向く。無垢な童の顔なんか、見れない。
「ああ、待ってな」
帰れないことなんて、分かっているのに。
溝尾淀。呪術に卓越した一家で産まれながら、蒐集院傘下の部隊に所属していた異例な人物。山崎の戦いにて戦死。
虚花園
作者: SCPopepape
票数: SCPopepape ×3, Cocolate ×6, teruteru_5 ×2, leaflet, MikuKaneko, Enho_Osho
永遠の果てまで続くかのような、白い花の海を歩く。疲れはない。欠乏も。
ここには何もない。
乾いたような香りだけがどこまでも漂っている。
咲き乱れるは罌粟の花。いつだったか飼い犬と共に別の世界に飛ばされてしまった少女──名をドロテアとかなんとか云ったか──が眠り込んでしまいそうなほどの。いいや、違う。あの物語の花は赤かったんだったか。
詮ないことだ。私はあの少女ではない。あの少女にはなれない。
脚が勝手に動く。頭だけは妙に冴えている。ただ、歩き続ける。ひとり。
たしか、かつてはこうではなかった。私を夢みたひとが、私を語って輪郭を描いて描き尽くそうとしたひとが、私を形作ろうとしたひとが。いた筈だけれど。
そうか。あなたは死んでしまったのか。何も残さずに。
だからどこにも道がなくて、思い浮かべてくれる人もいなくて。ひとり、彷徨って。終にたどり着く場所さえどこにも用意されていない。
酩酊などない。正気の定義がないから。
忘却されない。存在しなかったから。
停滞できない。進んだことがないから。
私に終わりはない。始まれなかったから。
休むことさえできず、花の雪原をただ歩き続ける。終着駅はない。どこにも続かない。
やがて、肢体が輪郭を喪失する。自他境界が次第に曖昧さを増し、周囲との区別がなくなる。
誰もすくい上げることがなかった意識が、誰にも知られることなく消えていく。ねむるように溶けていく。
永遠の果てまで続くかのような、白い花の海。ここには何もなかった。
乾いたような罌粟の香りだけがどこまでも漂っている。
忘却の季節
作者: Sodyum
票数: Sodyum, Matcha tiramisu ×4, kihaku ×2, hallwayman, Kajikimaguro, Fireflyer, Tobisiro, SCPopepape, Childream
1年前、桜は幸せの全部をかき消した。それさえあれば良いと思っていたものさえも全て。惨めさと惰性の高校三年生。年度が終わる。巡る4月は忘却の季節。降り注ぐ桜の花びらは変化への片道切符。どうせならもう一度。全てかき消してしまえ、桜。
羨ましいと思っただけさ。
作者: rokurouru
票数: rokurouru ×4, Childream ×3, Fireflyer, ocami, Tobisiro, SCPopepape, Matcha tiramisu
雲に空いた大穴から花弁が降り始めて4年程経つのかな。
最近本当に凄いよね。正体不明の謎の花弁。絶え間なく大量に降り続けるせいで色々と社会が機能してないの、正直笑えるんだよな。世界中で同じ事が起こってるのも不思議。ね、花弁による終末なんて、人類の終わりとしては風情が有りすぎんだよ。
話変わるんだけどさ。私には友達がいたんだ。
そいつの面白かった所って、定期的に体が花になってたんだよね。そう体が。体に花が咲き始めて三週間後位にはもう服だけ残して、後は花弁撒き散らして全部消えてんの。で、そいつ何故か二ヶ月位すると当たり前のように帰ってくるんだよ。そんで消えた時の服は私が持ってるでしょって家に回収しに来て。勘弁して欲しかったよ本当に。
まぁ、ある日そいつがいつもの様に家の前に立っててさ。「服、捨てといて貰っていい?」って。いいけど別に普段通り回収しとくよって答えたんだけど。「今度はもう、降りて来られないから」って言ってんだよ、そいつ。
それでそいつとはそれっきり。
……私、時々そいつが散らかした花弁をさ、調べるついでに仕舞ってたんだよ。密かにね。どれだけ探しても同じ種類の無い、私だけの花弁にしてたんだ。やけに香りが強くて、今はもう世界に有り触れている花弁を。
別にそいつが恋しい訳じゃ無いさ。
でも。毎朝花弁が降る度に、窓を少し開けて朝食を作る度に。そいつの匂いが、日常と混ざっていく。甘い気配だけが白紙の日々を染めていくんだ。匂いって人の記憶に一番残るんだよ。
死んだら何も残らないこの世界で、そいつだけは確かに何かを遺していく事ができた。
それが、只。
お花
作者: MikuKaneko
票数: MikuKaneko, Cocolate ×3, leaflet, Childream, Matcha tiramisu, rokurouru, Kajikimaguro, Burnin_A_GoGo, Enho_Osho, leaflet, ocami
突然だけど、私はあまり花が好きではない。
例えば、匂い。特に百合の花は身近にあるけれど、なかなか近づけない。
あとは、花粉。花粉症ではないけれど、気づかない間に袖に付いていた花粉が、どう洗っても落ちなくて。
でも、普段は何とも思わないのだけど、ふと私が作ってきたものの題材はお花ばっかり。
一昨々年のは、七年前の百合。浅い青のランプで照らされる対の花は、八つ離れて真っ白と黄色になっていった。
一昨年のは、八年前の鈴蘭。金の天気の中で一本からわかれている対の花は、上向きの笑顔と下向きの笑顔だった。
去年のは、二年前の無名のお花。それはとても幻想的な童話の世界の中で出会って、五つの花びらをもっていた。薔薇のようなお花のカラフルなお花畑をベッドにして。それはもう神様みたいで。この世界はこのお花が作ったのかなって。そんな瞬間はあっという間に過ぎてしまって。
去年のはもうひとつ。裏に一年前のお星様。五つに分かれていて、二年前のお花みたい。きらっと光るお星様は、満開に咲き誇って、魔法を叶える流れ星になった。
二年前に闇に紛れて昇った暗、一年前に闇を削って降った明。何故か切っても切り離せなくて、表裏一体のアクセサリーになった。
こんな風に思い出すと、ひとつでも、視覚ではいろいろな姿があって、それぞれの言葉が違ってくる。そんな特徴に、心のどこかにぽつんと残っていたのかもしれない。でも結局はなんとなく好きになれなくて、日常の一部にはなれていない。
だけど、その"非日常"を担っているいろいろなお花が、また、その日常の輪郭を彩っているのだと思う。
一輪の花を追って 【プロローグ】
作者: leaflet
票数: leaflet, teruteru_5 ×3, MikuKaneko ×2, Kajikimaguro ×2, Cocolate, SealBaby-V, ocami, hallwayman, Sodyum
「今日も集めてきてくれたかい、本。」
「うん。大収穫だったよ。」
「それは良かった、じゃあ分類も手伝ってくれる?」
「うん!」
「”山月記"これは?」
「それは教育かな。人が"変異"するのは心と関係があるみたいだし。」
「オッケー、次。"はたらくくるまのずかん"」
「うーん、迷うな、SFか歴史か教育か……。まあSFかな。」
「了解! えーっと"新約聖書"。」
「ああ、聖書は全部歴史でいいよ。最後の審判があったのが事実だし。」
「そうだよね。じゃあこれ……これ前"餌場"に居た放浪者に似てない? "うろんな客"。」
「本当だ、そっくりだね。この頃にもいたのかな、歴史か教育……歴史に入れておこうか。」
「これは中身が読めそうで読めないや……。"非常飢餓毛毛蟲"。」
「うーん、違う巣穴の言葉かな? これは研究用に回そうか。」
「そしたら次、"確実に金持ちになる「引き寄せの法則」"。」
「あー、そういうシリーズもまた迷うんだよね。思想宗教……いや教育……いや思想宗教かな。」
「"力学・場の理論 ランダウ=リフシッツ物理学小教程"これは教育?」
「あ、それ教科書っぽいけど、物理法則って全部変わっちゃったみたいだから昔の物理って役に立たないんだよね。宗教か歴史かSFか……SFにしとくかな。」
「最後はこれ、"花屋さんで人気の469種 決定版 花図鑑"。」
「花か……。」
「これ、今はもうないんだよね? SF?歴史?」
「うーん……。そうなんだけど、一回だけ見たんだよね。」
「じゃあまだこの世界にある? なら教育?」
「……”私にとっては”宗教かな。」
「その話、聞いてみたいかも。」
「うん、あれはまだ月が1つだった頃なんだけど―――
咲き誇る。
作者: Kajikimaguro
票数: Kajikimaguro, Sodyum ×3, Enho_Osho ×2, makigeneko, ocami, SealBaby-V, Fireflyer, Cocolate, rokurouru, Tutu-sh
燦々と煌めき蒼碧に佇む日輪が微睡んでいる。潤った翠緑が続く地平線で、只深く澄み渡る蒼碧を眺め、それを飲み込む。
いつしか日輪を平らげた黒曜には、未だ文明に蹴散らされず遺る、幾ばかの白銀の煌めきが映っている。砂銀が身を寄せ合い眩く輝く大河から、一つの滴が零れ堕ち、ゆっくりと溶けた。
私はただ佇む、あの日輪の様に。
私はただ居る、あの大河の様に。
私はただ果てる、あの滴の様に。
私はただ、あの人の様に
五千年のメラム
作者: Tobisiro
票数: Tobisiro ×5, SCPopepape ×2, Tutu-sh, Musibu-wakaru, leaflet, rokurouru, makigeneko, Fireflyer
「世界中の花を集めてみたい、そう思ってる」
私の十五回目の生誕祭の後、私の部屋を訪れた父が、そう語ったのを覚えている。
「それが一国の王としての望みなら、命じれば良いでしょう」
父はそうじゃない、と答え
「単なる夢だ。夢に人を割くのは暴君だけさ」
「私に暴君にはなるな、と仰りたいのですか」
苛立って、そう言い返す。十五の大人に言うこととしてありえない。苛立ちでドン、と壁を叩くと、壁に取り付けた松明の炎が揺れた。
「そう言いたいんじゃない、ウト。子供じみたことだが、生きていく上で、夢と希望を忘れないでくれ。未来が暗くても」
父の月の色をした目が、私を捉えている。からわれているのではない。やはり父は偉大だと認識させられた。
月日は流れ、私は王に成れなかったが英雄として役目を与えられ、世界を旅し、全てを視続けている。死も忘れて。だが忘れていないものが三つある。夢と希望と、命日だ。
今日は父の五千回目の命日だ。骨も残らぬ父のもとへ私は足を運んだ。
「戻りました、父上。なかなか戻れずすみません。ずっと乱世でして」
辺りには観光客が訪れており、その賑わいに懐かしさを感じてしまう。
「私が今日まで私でいられるのは、あなたのおかげです。本日は、そのお礼をしたく参りました」
私は持ってきたブーケを父が最期を迎えた聖塔へと投げ入れる。私がこの世界で好きな花を厳選したブーケだ。扱いとしては乱暴だが、聖塔の中は立ち入り禁止だ。
我が父の功績に光メラムあれ!
太陽のもとで、世界中の花々が宙を舞った。
わたしの追悼録
作者: teruteru_5
票数: teruteru_5 ×6, kihaku, Syutaro, Sodyum, SealBaby-V, ocami, Cocolate, Burnin_A_GoGo
ふっと、日差しが目に入る。ポカポカとした陽気が、身体を包んでいた。ここば何処だろう。そう考えて、辺りを見渡す。そんなわたしの視界に入ってきたのは一面の花畑だった。思わず見とれてしまうほどに、綺麗な光景だった。
そよそよという風が吹いている。暖かな陽気と混じって、心地よい温度となっていく。この世界に果てはあるのだろうか。疑問に思ったわたしは、額に浮かんだ汗を拭って足を動かした。足裏を伝う草花の感覚に、懐かしさを覚えながら。
それから暫く歩き続けた。道中では、綺麗な羽の蝶を見た。まるで青白く燃える炎のような羽だった。不思議と家族を思い出して泣き出してしまいそうになった。どうして、わたしは泣きそうなのだろうか。
暫く歩いたわたしは一本の木を見つけた。とても大きな、桜の木を。枝の端まで染められた淡いピンクが目に入る。ヒラヒラと舞い散る花弁を眺めながら、深く息を吐く。どうにも身体が疲れているらしい。休息を取るため、わたしは桜の木の下に横たわった。
暖かな日差しが身体を包んでいく。舞い散る桜の花弁が頬の上に乗る。わたしはそれを手に取って眺めた。透かされたピンクが、ステンドグラスのように映る。キラキラと輝く太陽に照らされたわたしを眠気が襲う。
疲れすぎたのだろうか。そう考えたわたしは、ゆっくりと目を瞑ることにした。ぱちぱちという音が、耳元で聞こえる。頑張ったわたしへの賞賛だろうか。そう考えながら、完全に目を閉じる。黒が視界を包んでいく。
暖かな日差しの下で、わたしは眠りについた。
オシャカになったもの: PC、モニター、スーパードライ、その他家具
作者: Syutaro
票数: Syutaro ×8, leaflet ×2, Fireflyer, Tutu-sh, Kajikimaguro
「なあ。PCケースの中、入ってみねえか。」
我が悪友、ドラえもんはそう言いながらスモールライトを取り出した。
「面白えか?」
「面白えだろ。」
かくして俺達は、購入してから10年間掃除していないきったねえPCケースの中に入った。
中は薄暗く、マザーボードから漏れる虹色の光が主な光源だった。通りぬけフープから数歩進んだところで、べちゃっとした感触が足を襲う。
「クソ!こりゃ、虫の小便だ!今虫と遭遇してみろ、一巻の終わりだぞ!」
「落ち着け、お前にも武器を渡してやる。タイム風呂敷で卵に戻すか、ライトで小さくしちまえばいい。」
武器を手に、俺達はマザーボードを目指した。CPUファンの音を聞きながら、壁に手をかけてよじ登る。
登り切った先に広がっていたのは、1つの世界だった。CPUを取り囲むツタ、まだら色の花、花の周りを飛ぶ蜂のような虫。
「まさか、あの光で光合成してるのか?」
「麦みてえな匂いだ。俺達が溢したビールで生長したな。」
頭上を羽音が通過した。虫どもは、俺たちを獲物と捉えたらしい。
「クソッ!埃が関節に詰まった!」
「メンテを怠ったなバカ狸!」
青狸は仰向けに倒れた。俺は虫にスモールライトで応戦するが、数があまりにも多すぎる。青狸に駆け寄り、4次元ポケットを漁った。
「整理しとけよ!なんで地球破壊爆弾が一番取りやすい位置にあんだよ!」
「ネズミ対策だ!いや、待て、そいつを起動しろ!」
「地球を壊す気か!」
「違えよ!ライトで小さくなってりゃ威力だって小さくなんだろ!急げ!」
俺は後ろに振り向き、爆弾を投げた。向き直れば、青狸は俺にスモールライトを当てている。背中に爆風を感じながら、青狸のポケットへと飛び込んだ。
A Good Man Went to War
作者: Tutu-sh
票数: Tutu-sh ×3, Kajikimaguro ×3, Tobisiro ×2, Fireflyer, Childream, hallwayman, makigeneko, Burnin_A_GoGo
「憎悪に塗れた一兵卒のダーレクが、今や小さな祠とは」
波の音を立てる草原の中で一人、ツイードに袖を通した痩身の男が立っている。蝶ネクタイをあしらったまま、しかし頭上のトルコ帽はそっと外された。彼の見下ろす視線の先では、錆び付いた殺人兵器がただ叢に沈んでいる。
「抹殺スルノカ」
か細く途切れそうな祠の声。視覚装置は死んでいる。装甲は剥げ落ち、銃口も上に曲がり、とうの昔に機能を喪失している。同胞を奪った悪鬼羅刹はたった独りの残滓となって雨風に晒されながら、朽ち果てる時節を悠久の内に待っていた。
「その気も失せた。この星に墜ちたお前が何をしたか知ってる」
男は近くの岩に腰かけ、手をひらひらと舞わせてみせた。
「時空間からたった一人零れ落ちたんだろ。お前の外殻が簡単に壊れないなんて僕が一番分かってる。それが今や、武器もガラクタで、力場も張れない代物だ。通信機能しかない、この星の原住民から物珍しい目で見られるだけの、地面に落ちた流れ星」
「迫リ来ル嵐ガ、自分ニ憐憫ヲ向ケルノカ」
「いいや」男はぱたぱたと手帳を振る。「僕は見た。ソンターランの艦隊が迫ったその時、大規模な電磁パルスがこの星で発生した。それをやってのける科学技術はここには無い。お前だろ」
ごそごそと衣服を漁る。手帳の代わりに空気を吸ったのは鮮やかな1輪の薔薇だった。
「君にやる。ローズだ。遠い遠い別の宇宙の、地球という惑星で、変化と守り神を意味する名前の花だ」
「ダーレクハ贈賄ヲ受ケナイ」
「これは慈悲への誉だ。後はもう僕に任せろ」
かつて数多の命を奪った円筒に花を挿し、男は祠を後にした。かつて戦場を揺らしたエンジン音は、空の戦艦を目指して飛び去った。
(無題)
作者: makigeneko
票数: makigeneko ×5, hallwayman ×2, Musibu-wakaru ×2, SCPopepape, Enho_Osho, SealBaby-V, Sodyum
花恐怖症。患者は花が脅威ではないと理解してなお、見たり考えたりすることに強い不安を感じる。花弁や茎など花の一部も恐怖の対象になる。
「VRchatの中でも咲いてるんだけど」
「そこも世界の一部だってことなんじゃないですかね」
一時間くらい前のフォロワーのリプライになんとなくの返信をしておいた。
報道機関やSNSの反応から、それはこの土曜の正午ちょうどに起きたらしい。僕がクレジットと時間の交換にひたすら夢中になっていた間のことだ。確かに、アミューズメント施設の外はさっきまで無かった、いや、そもそも有るはずがないコンクリートを破る花々で埋め尽くされている。世間の反応はともかく、僕にとっては厄介さのほうが上回って落ち着かない状況だった。流石に建物の床までは抜けてこないと思うが、その時は上のカラオケ階に避難しなければならないだろう。その瞬間がアーケードゲームとの別れだ。
ほどなくして、誰の何を根拠としたのかも分からない概要が文書の形で拡散されてきた。「花なら大多数が納得して落ち着くだろう」という適当な意志が透けて見えるし、ここに居る反例のことまでは考慮していない。そんな感想に落ち着いた僕には、これは単なるエゴとしか捉えられなかった。
もし本当に居るのなら、反論をするべきだ。個人の思いの押し付けじゃなくて、本当に他人の喜びを思って拡散された「 花」をそいつに聴かせなければ。僕は十年来の付き合いになる筐体のステップを踏み上がって、クレジットを投入した。
花盛り
作者: kihaku
票数: kihaku ×6, Matcha tiramisu ×2, Childream, ocami, Syutaro, hallwayman, Enho_Osho, MikuKaneko
梅下にて 匂いて待てり とふみ送り
白下は暮れて 紅下も暮れり
富貴草 竹敷屋根の 土壁の
袂に首は ぽとりと一つ
秋七つ 青に黄色に 粧えど
萎み燻みて 人も移ろい
霜崩し 積もる緋茶梅 はらひらり
想い馳せつつ 春は刻々
「この歌は春夏秋冬を詠んだものですね」
壁掛けの達筆を眺めてそう聞けば、老婆は人の良い微笑みを浮かべ庭先に目を向けた。つられて其方に目を遣れば、鮮やかな彩が目に飛び込む。
「綺麗なお庭ですね。全部お一人で管理を?」
「えぇ。随分前から、ずっとですねぇ」
老婆は硯に水を差し、さりさりと固形墨を磨る。
「歌のお花は全部お庭に咲くけれど、どれも私が昔見た物に準えて詠んだのよ」
白い筆先に墨を含ませ、和紙地の短冊を手に取った。
「人の死に様は幾度となく、すれ違う悲愛も見てきたわ。今はもう、ここで静かに彼女たちの咲き誇るを見るのみだけれどね」
筆が走る様は実に愉しげで、やがて短冊を渡された。
「訪ねてくれて、ありがとうね」
「いえ、そんな」
短冊を受け取り顔を上げる。
竹敷屋根から空が見え、座る縁側は私のみ。小さな古屋の土壁は、所々に兎穴。墨も硯も白筆も、姿形はつゆと消え、すわ泡沫かと手元を見れば、そこには確かに短冊があった。
四季巡り あらたまれども 変わりなく
この花咲くや 枯れゆく己
庭先は、先刻と何ら変わりなく、数多の彩が咲き誇っている。
撤花
作者: Matcha tiramisu
票数: SealBaby-V ×3, Musibu-wakaru ×2, MikuKaneko ×2, Fireflyer, ocami, Enho_Osho, rokurouru
花が好きだ。
どんな時でも、心に寄り添ってくれる存在だから。
◇ ◇ ◇
子供の頃、家に帰れば花があった。
毎月両親が花を買っては、これがシャクヤク、これがバラ、といってその花ごとに教えてくれた。
どの家庭にも、花瓶に生けられた花があるもの、そう思うようになった。
この話をした時、彼女の目が輝いたのは意外だった。
「よく花に話しかける」という趣味は黙っておく事にした。
◇ ◇ ◇
同棲、結婚まですると、もう花に話しかける事は無くなった。
家に帰れば待っている人がいる。話す人がいる。寄り添ってくれる人がいる。それが幸福だった。
ある日、2人で花を選んで、花瓶に生けてみた事がある。
花瓶を挟んで2人談笑し合う時間は、今でも、ずっと頭の中に残っている。
◇ ◇ ◇
信号無視のトラックにはねられ、頭から胸にかけて強く殴打。
その後病院に運ばれたが、出血多量で死亡。
警察から電話をもらって、そこからどう行動したのか、まったく覚えていない。
ただ、泣き叫んだことだけは覚えている。
◇ ◇ ◇
君の笑顔は、白菊に囲まれていた。
事故現場では、電柱脇のカラフルな花々が君を弔った。
君が誕生日にくれたガーベラは、葉の先からだんだん枯れてきている。
花が嫌いだ。
君の笑顔を思い出すから。
君の声を思い出すから。
君と談笑した日々を思い出すから。
2人で買った花を思い出すから。
あの日、何も出来なかったから。
無責任感
作者: Musibu-wakaru
票数: Musibu-wakaru ×4, hallwayman ×2, SealBaby-V, Tutu-sh, leaflet, makigeneko, kihaku, Sodyum, Kajikimaguro
「花という字は、人と人とが互いに重なり合ったり独立したりしてできている」
2194年3月9日、卒業式の日。高校最後のホームルームで教師は言った。彼は泣いても笑ってもいないので、数百年前のドラマの名台詞をパロディしたかっただけらしい。あまりきまっていないと思うが、彼は席についているクラスメイトの顔たちを満足気に見渡し、格好つけるように続けた。 「この花の中で、私達は独りじゃ生きていけないんだ」 その時差し込んだ光の眩しさを覚えている。
花。或いは生存域と呼ばれている、それはそれは大きな有機体。兆候を見せていた温暖化はいよいよ加速度的に進行し、終にこの人類の叡智を込めた砦に籠るほかなくなった。資源を取り付くし、多くの動植物が絶滅した。地表の97%は太陽光パネルに覆われ、残った3%に私達はしがみついている。厚いグリーンカーテンから1歩外に出れば、そこには死以外何も無い。
私達の人生は決められている。花を管理し、新たなエネルギーを模索し、この惑星から出るためのロケットを開発するのだ。そして最後にはここの養分になる。それがノアの方舟の操舵を任された種族の使命。先祖が好き放題しただけで、私はなんら地球を痛めることはしていない。しかし問題は私ではなく、私達なのだ。
上昇するエレベータの中で考える。私は今から柱頭へ向かい、研究者としての人生を始める。無論行ったきりという訳ではない。が、今後このような気持ちで昇ることはないだろう。ふと、上を見る。まだまだてっぺんまで細長く伸びているこの道程。硝子越しに大きな白いトコシエの花弁、その影が私にかかっていて。それなのに私はひどく眩しいと感じた。
(無題)
作者: Cocolate
票数: Cocolate ×2, Sodyum ×2, Tobisiro ×2, Kajikimaguro ×2, Childream, Matcha tiramisu,
Enho_Osho, SCPopepape, makigeneko
吸血鬼は、太陽が嫌いだ。
宝石は、光が反射と屈折を繰り返すことによって煌めく。
月光の微かな光は彼に似合うが、どんな人だって彼が太陽の下に出たらどれほど綺麗か。想像せずにはいられない。
「ああ、きれいだ」
幻想の中の彼に誰もがため息と共にそう吐き出す、そんな男だった。
彼は、その美しさを崇める女から花を奪った。
一〇〇年くらい前に、吸血鬼が醜く嫉妬した少年が好きだった花だった。
淡く儚く月色を灯す其れは、月球と天陽の美しさを兼ねて彼を見つめて。
夜でしか生きられない彼は、其れに少年を重ねて見つめた。
花が植木鉢からはみ出し始めた時。花が彼の元に来て四季が巡りかけた時。
吸血鬼は悟り始めていた。
自分とその花は決して相容れない存在だと。
自分は夜を歩く住人で、花は。少年は、太陽の下を歩く旅人で。
だから吸血鬼は、花を逃すことに決めた。
厚い衣装を纏って陽の下を歩く。
小高い丘の上に、其れを植わえてやるために。
決して花を見なかった。
其れを見ようと深く被ったフードを外そうものなら、彼の美しさに嫉妬した陽光が彼を直ちに焼くから。
天日を弾く花はきっと綺麗なのだろうな。
彼はやはり太陽が嫌いだと思った。
月が何十回か満ちて欠けた頃、彼は花を見に行こうと思った。
唐突に、そう思った。
花は彼を待ち侘びたように満開だった。
垂れ咲く薄い桃色が真っ白な彼の頬を優しく撫でた。
いつかと違うその姿に、ため息をこぼした彼に、朝の陽射しが降り注いだ。
あまりに花が美しかった為に夜明けに気づかなかった吸血鬼は、しかし、彼が初めて見た、日影に包まれたその姿は。
「ああ、きれいだ」
顎を伝った雫に、光が屈折して輝いた。
桜の下には死体が埋まっている。
アイ()ビー
作者: ocami
票数: ocami ×2, hallwayman ×2, SealBaby-V ×2, SCPopepape, Musibu-wakaru, Syutaro, Tutu-sh, MikuKaneko, Childream, leaflet
スカイツリーが見えてきた。古い鉄塔に巻き付いた、"ツリー"とは名ばかりの、私たちの母親である巨大な花。日光を受けて輝く純白の花弁は、時の流れを感じさせない。
トウキョウからはやや遠いノトで育った私は、幾つかの質問を携えて、スカイツリーにやって来た。
スカイツリーの高さは約620m。会話が出来る距離まで進むには、約600m地点までは登らないといけない。既に挫けそうな心を奮い立たせ、古ぼけた階段を登る。古い本によればエレベーターがあるらしいが……こんなところに電力を割く余裕など無く、使えるのは階段と梯だけとなっている。
誰の言葉だったか、始まりは半分以上あるらしい。ここに来て再度実感する。私の脚は意外にも働き者だったようで、太陽が傾き始めた頃、気づけば母と会話出来る高さにいた。
「こんにちは、お母さん。幾つか聞きたいことがあって」
バッグから本を2冊取り出す。図書館から無断で持ち出した本だ。
「この2冊の本、"動物"と"花"の図鑑なんですけど……私たちって、本当に人間なんですか?」
優しい声が止まる。お母さんはどんな表情をしているのだろうか。
「この花って、私たちみたいな顔してるんですね。でも、人間の頭は花に似てなんかないし、花の根は人間の形じゃない。私たちって、"何"なんですか? 本当の人間はどこに居るんですか?」
気味の悪い沈黙が流れる。引き伸ばされた数秒の後、細い蔦の壁が開いた。誘われたように一歩進むと、くしゃり、と乾いた音が聞こえた。茶色く染まったそれは、私たちの慣れの果てで。
気づいて足を止めた時には、もう遅い。
プチっと音を立てて、図鑑通りの花が咲いた。
花と嵐
作者: hallwayman
票数: Matcha tiramisu ×3, ocami ×2, makigeneko ×2, Tutu-sh ×2, MikuKaneko, Cocolate, kihaku, Musibu-wakaru, SCPopepape
「花に嵐のたとえもあるさ
さよならだけが人生だ」
中学の時に大切な人に教えて貰った詩。
もう一つ教えてもらったけど、それは前まで忘れてて。
あの頃は周りと馴染めなくて。
でも一人だけ面倒を見てくれていた。
汐恩先輩。
明朗さで慕っていて。
色々なことを教えてくれて。
偶に遊びにも付き合ってくれて。
高嶺の花の筈なのに。
側にいて貰うだけで嬉しかった。
神無月。
台風で学校が休みになった。
でも忘れ物を取りに外へ出た。
傘に包まれて無人の街中や裏路地を進む。
裏路地の古アパートの階段の前を通りがかる。
そこに汐恩先輩が居た。
しぼむみたいに佇んでいた。
顔と腕には青あざ。
ふと思った。
先輩はいつも長袖で。
家のことはいつもはぐらかされて。
急いで駆けると先輩は。
「気にしないで」
固まっていると先輩は「またね」と声を投げて戻って行く。
その後ろ姿が飛んでしまいそうに見えて。
口から出してしまった。
「学校で待ってます」
すると先輩は呟くように。
「じゃあね。あなたの春はまた来るんだから。」
次の週。
学校で先輩と逢った。
あの意味を詳しく聞きたかったけど。
触れてはいけない場所に触れる気がして。
それ以来、先輩とは直接言葉を交わすことは無かった。
二度と出来なかった。
父親に刺されたとのことである。
詳細は教えてられなかったし調べられなかった。
でも三学期に姿を見せてくれることは無かったのは確かだ。
机の整理をした。
たまたま床に落ちた教科書。
付箋がある頁を開く。
「さよならだけが人生ならば
また来る春は何だろう」
ふと思う。
あの人はあれでさよならだと思ってたのかな。
でもやっぱりさ。
花がない春は辛いよ、先輩。
ふたり
作者: SealBaby-V
票数: SealBaby-V, Fireflyer ×2, MikuKaneko ×2, Tobisiro, Kajikimaguro, leaflet, SCPopepape, Enho_Osho, rokurouru, ocami, Kajikimaguro, kihaku
花畑に二人の人間がいる。私は立っていて、彼女は車椅子に座っている。私は自然の匂いが少し苦手だが、彼女にはいい匂いらしい。
「久しぶりに来たね。いい匂い。」
「そうですね。」
彼女は嬉しそうに言う。綺麗な笑顔だ。
「前に来たのは、えっと……三年前だっけ。」
「はい。」
本当は十年以上前だ。記憶が混濁していて、頭の中で時系列がバラバラになっているみたいだ。
「あの時は舞ちゃんが誘ってくれたんだよね。一緒に走ったりして楽しかったな。」
「あの時は静香さんも元気でしたね。」
「うーん。今はこんなになっちゃったけどねー。あははー。」
静香さんは足が悪い。リハビリはうまくいかず、ずっと車椅子状態だ。
「舞ちゃんってなんで敬語使うの?」
「……。」
最近は同じ質問を何度もされる。
「私が世話役だからですよ。」
「そっか、そうだったね。」
「……花、綺麗ですね。」
「うん。綺麗。」
静香さんにはもう一つ体に悪いところがある。
それは、
「げほっごへっ。」
「静香さん!」
心臓だ。
彼女の白色のワンピースが赤く染まっていく。
「あはは、ごめんね。」
「そろそろ病室に戻られた方が。」
「……。」
「静香さん?」
「いいの、今日は。」
隣から彼女の声が聞こえる。目の前の彼女からではなく。
隣を見ると、彼女は綺麗な顔で立っていた。
「今日はさ、遊ぼうよ。昔みたいに。」
「……静香さん。」
「鬼ごっことかよくやったよね。」
「静香さん。」
「……わかってる。ごめんね。」
二人で向かい合う。
「今までありがとうございました。静香さん。」
「うん。ばいばい。舞ちゃん。」
彼女は目の前から消え、花畑には一人の人間が残った。
お花の妖精さん
作者: Enho_Osho
票数: Enho_Osho ×3, rokurouru ×2, Musibu-wakaru ×2, leaflet, kihaku, Syutaro, SealBaby-V, Tobisiro, leaflet, hallwayman
初めて入った喫茶店で珈琲を頼むと、豆菓子の代わりに殻に入ったままの落花生が付いてきました。
落花生を掴み親指と中指で力を加えると、パキッと亀裂が入り中から豆が顔を覗かせました。
僕は思い出しました。
小学4年生の時のことです。
僕の小学校では校庭の片隅の、少し広い砂場程度の大きさの畑で落花生を育てていました。
4年生が収穫の担当で、毎年11月に落花生掘りの行事が行われていました。
その年は僕らの番で、収穫した落花生を家庭科室で塩茹でにし皆で頂きました。
落花生を掴み親指と中指で力を加えると、パキッと亀裂が入り中からちいさいおじさんが顔を覗かせました。
「へっくしょい!ボケなすぅ」
甲高い声が微かに聞こえました。
「なに見とんだて、見世物ちゃうねんぞ」
僕は眉を顰めながら、殻を半分取り除きました。
「珍しいか?まあ珍しいわな。おじさんもこんなん初めてだで。落花生ってこうな、お花が枯れると土の中へ潜って先っちょが膨らむんさな。それが落花生になるわけよ。あ、おじさんはお花の妖精さんなんけどな、少々手違いでそのまま殻の中に入ってもうてん。取って食わんといたってぇな」
「え、きも」
ちいさいおじさんは薄い目を押っ開いて言いました。
「おい!失礼な奴やの。そんな奴とはもう話さんで。閉じ籠っちゃうもんね。落花生の殻貸せぃ!……なんちって」
僕はそっと殻を閉じ、それをゴミ箱へと捨てました。
僕は思い出しました。
忘れていたことすら忘れていた記憶がそこにはありました。
豆を口に放り込みます。
2つ目の落花生を掴み親指と中指で力を加えると、パキッと亀裂が入ります。
どこからか甲高いくしゃみが聞こえたような気がしました。
(無題)
作者: Burnin_A_GoGo
票数: Burnin_A_GoGo ×8, Tutu-sh ×2, hallwayman, makigeneko, ocami, SCPopepape
舌から続く半端に柔らかい感触を門歯で受け止める。軽く挟まれながら引き抜かれたそれは数本の糸に分離し、口内に青黒い感触を残した。沸き上がる罪悪感から逃れる為に唾液と繊維を交ぜつつ黒檀に目を遣る。露骨に堆積した埃は私に酷い不快感を齎した。生活感を微塵も有さない六畳間に溜息が反響する。
口を窄め、淀んだ空気を吹きかけてやると漸くその全貌が掴めた。はじめて視界に入れる彼女が浮かべた笑顔は何処となく歪んでいて、私に見せたそれとは遥かに遠い。生前の表情を定義する人物は彼女を余程嫌っていたか、或いは興味を欠いていたのだろう。彩度の高い桃色の龍胆は彼女の趣味に合わないと容易に推測できる筈だった。
衝動の儘に削いでしまい、片手に携えていたものに視線を落とす。下半分の直径が縮小している茎部は人為的に生まれた異常である事実を喧伝していた。不用意な行動に対する後悔が過るが、僅かに逡巡してから手折って片方を上着に落とす。花瓶の深さは私を裏切らない。
「──終わりましたか」
ゆっくりと襖を閉じる背中に絶え間なく注がれる視線は私を拒絶している。ただ照明が眩しい。先刻まで膝を下ろしていた空間との差異に吐気を催す。板材に塗りたくられたワックスが表情を反射するように錯覚した。慌てて視線を持ち上げれば、乾燥した前髪の奥から覗く想像以上に強い眼光と衝突する。口先まで覗いた言葉を押し込んで早々に踵を返す決意を固めた。
鋼鉄製の扉を開いた先に曇天が拡がる。季節外れの寒風に身を縮めると同時に、彼女の好いていた環境を想起して緊張が解れていった。上顎に貼りつく小さくて歪な塊に味は残らない。
優勝特典
SCPopepapeへの翻訳リクエスト権(要らなかったら永続批評権でも可)




